肌の赤みやニキビ跡に悩んでおり、色素レーザーの照射を検討している人や、光治療の施術を受けたもののなかなか改善がみられず悩んでいる人もいるでしょう。当記事では、ロングパルスヤグレーザーとVビームの違いを解説します。

 

レーザー医療機器としての違いだけでなく対象となる症状や施術回数などに関しても説明するので、ぜひ参考にしてください。

 

レーザー医療機器としての違い

ロングパルスヤグレーザーとVビームはいずれもヘモグロビンやメラニンなど人間のもつ色素に反応するレーザーですが、それぞれの波長および照射した際にレーザーが反応する深度が主な違いです。いずれのレーザーも、血液中のヘモグロビンや異常のある毛細血管のみに反応し破壊できるため、血管腫や赤ら顔などの改善に期待できる医療機器です。

 

【ロングパルスヤグレーザーとVビームの違い】

 

ロングパルスヤグレーザー

V ビーム

反応する色素

・ヘモグロビン色素

・メラニン色素

・ヘモグロビン色素

波長

1064 nm

595nm

照射方法

・照射口を皮膚から離して照射する

・レーザー光を連続的かつシャワーのように照射する

・照射口を皮膚に当てて照射する

 

照射目的

色素病変の治療、脱毛

色素病変の治療

 

ロングパルスヤグレーザーはVビームと比較して波長がより長いため、ロングパルスレーザーはVビームより肌の深部に反応します。また、ロングパルスヤグレーザーは設定を切り替えることで、脱毛や美容目的、色素病変の治療など幅広く対応できる点がVビームとの違いといえます。

 

Vビームは肌の表面の赤み、ロングパルスヤグレーザーは肌の深部にある赤みの原因に効果が期待できる色素レーザーといえます。症状や治療の経緯に応じて照射行うことで、肌の悩みに効果的にアプローチできるため、どちらを照射するか悩んでいる人は、皮膚科専門医を受診して相談してみましょう。

 

ロングパルスヤグレーザー

ロングパルスヤグレーザーは、医療レーザーの中では最も波長が長く、レーザーが皮膚の深部まで届く機種です。医療を目的としたロングパルスヤグレーザーは、複数のメーカーから機器が発売されています。

 

【ロングパルスヤグレーザーの例】

  • ジェントルYAGロングパルスレーザー(キャンデラ社)
  • QスイッチNd YAGレーザー(キュテラ社)
  • ジェネシス(キュテラ社)

 

ロングパルスヤグレーザーは皮膚治療複合機として設定を変更することで、赤ら顔・血管腫だけでなく、シミや小じわの改善、脱毛など幅広い肌の悩みに対応可能です。

 

ロングパルスヤグレーザーの波長は1064 nm です。ロングパルスヤグレーザーは肌の深部に反応するため、Vビーム照射で効果がみられなかった症状に対する第2選択としても用いられ、症状の改善が見込める可能性があります。

 

Vビーム

Vビームは血管中のヘモグロビンに作用し、熱を加えて異常のある血管を破壊する色素レーザーです。Vビームはパルス幅を変えられる「ダイレーザー」という種類のレーザーを使用しており、肌の赤みや血管腫、ニキビ跡などの改善に用いられています。

 

Vビームの波長は595nmと、血液中のヘモグロビンに吸収されやすい点が特徴です。Vビームの波長は肌の真皮に届きますが、ロングパルスヤグレーザーと比較した場合、深達性や反応する血管の太さに限界があります。

 

なお、Vビームの特徴や効果に関して知りたい人は「 Vbeam Prima – Vビーム –」を確認してください。

 

施術対象となる症状

ロングパルスヤグレーザーとVビームはいずれも肌の赤みに対して効果が期待できるレーザー医療機器です。

いずれも色素レーザーですが、施術対象となる症状にいくつか違いがあります。

 

施術対象となる症状

ロングパルスヤグレーザー

Vビーム

・赤ら顔(毛細血管拡張症)

・赤みのあるニキビ跡

・シミ

・小じわ

・血管腫

・下肢静脈瘤

・赤ら顔(毛細血管拡張症)

・酒さ

・毛細血管拡張症

・ニキビおよび赤みのあるニキビ跡

・血管腫

・ケロイド

 

ロングパルスヤグレーザーは、シミやニキビ跡に対するピンポイントでの照射も可能です。また、コラーゲンを増生させる効果が期待できるため、シミや小じわ改善など美容を目的とした施術にも使用されています。

 

一方、Vビームは赤ら顔や血管腫、ニキビ跡、肌のくすみなど、おもに毛細血管の増殖による肌の赤みに対して効果が期待できるレーザーです。ニキビの炎症やケロイドの改善にも使用されています。

 

痛みやダウンタイム

ロングパルスヤグレーザーおよびVビームの痛みやダウンタイムはそれぞれ照射目的や症状によって個人差があります。

 

ロングパルスヤグレーザーを肌の赤み改善を目的として照射した場合、Vビームと比較して痛みが強い傾向があります。ダウンタイムは照射の目的や症状によって異なりますが、1、2週間程度です。ただし、ロングパルスヤグレーザーの中には、肌質改善を目的とした設定で使用できる機種があり、照射中も温熱を感じるのみで痛みがなく、ダウンタイムも不要なケースもあります。

 

一方、Vビームの最新機種であるVbeam primaはレーザー照射直前に冷却ガスを噴射するため痛みを軽減できます。ダウンタイムは照射部位の赤みの程度によって異なりますが、2日から2、3週間程度です。

 

痛みを感じる程度は個人差があるので、ロングパルスヤグレーザーとVビームどちらの痛みが強いかを比較するのは難しいです。ロングパルスヤグレーザーおよびVビームのいずれも麻酔の併用も可能なクリニックがほとんどなので、痛みに不安がある人は医師に相談してみましょう。

 

保険適用の条件

ロングパルスヤグレーザーとVビームの違いとして保険適用となる条件が挙げられます。ロングパルスヤグレーザーとVビームによる保険適用の対象となる治療はそれぞれ照射対象となる皮膚疾患の色素が青みがかっているものか、赤みがあるものかによって異なります。

 

【ロングパルスヤグレーザーとVビームの保険適用となる条件】

 

ロングパルスヤグレーザー

Vビーム

保険適用となる機種

・QスイッチNd YAGレーザー

・VビームⅡ

・Vビームプリマ

保険適用の対象となる症状

・太田母斑

・異所性蒙古斑(青あざ)

・外傷性色素沈着症

・単純性血管腫(赤あざ)

・乳児血管腫(いちご状血管腫)

・毛細血管拡張症

費用負担

・3割負担

・高校生以下(乳幼児を含む)は地域によって無料もしくは500円の負担

照射対象

症状のある部位のみ

照射間隔

3か月に1回(3ヶ月+1日)

照射回数

制限なし

※色素の深さや範囲などによって異なる

 

ロングパルスヤグレーザーで保険適用になるのはQスイッチNd YAGレーザーによる「太田母斑」や青あざと言われる「異所性蒙古斑」、傷口から入った鉛筆などの色素が皮膚に残ってしまったタイプの傷跡である「外傷性色素沈着症」の治療です。さらに保険適用の対象となる症状に対して、QスイッチNd YAGレーザー以外のロングパルスヤグレーザーを照射することは保険適用外(自由診療)となります。

 

一方、Vビームで保険適用になるのは毛細血管の増殖が主な原因となっている赤い色素の皮膚疾患に対する治療です。赤あざと言われる「単純性血管腫」、生後数週以内に現れる「乳児血管腫(いちご状血管腫)」や、「(原因不明の原発性)毛細血管拡張症」と診断された場合には、保険適用となります。

 

QスイッチNd YAGレーザー(ロングパルスヤグレーザー)は青あざなど青みを帯びた皮膚疾患、Vビームは赤あざなど赤みを帯びた皮膚疾患が保険適用の対象となります。保健適用でそれぞれの症状を改善するためには、まずは症状が保険適用の対象となるかどうか医師の診察を受けたうえで、症状に応じてQスイッチNdYAGレーザーもしくはVビームを扱っているクリニックを選択しましょう。

 

まとめ

ロングパルスヤグレーザーとVビームはいずれも色素レーザーですが、それぞれの波長が主な違いです。ロングパルスヤグレーザーの波長は1064 nm であるのに対し、Vビームの波長は595nmと、ロングパルスレーザーはより肌の深部に反応します。

 

ロングパルスヤグレーザーはピンポイントでの照射も可能で、シミや小じわ改善など美容を目的とした施術にも使用されています。一方、Vビームは赤ら顔や血管腫、ニキビの炎症やニキビ跡、肌のくすみなど、主に毛細血管の増殖による肌の赤みに対して効果が期待できるレーザーです。

 

ロングパルスヤグレーザーおよびVビームの痛みやダウンタイムはそれぞれ照射目的や症状によって個人差があり、施術回数および間隔は症状によって異なります。また、ロングパルスヤグレーザーとVビームの保険適用は症状によって異なるため、治療内容に合わせて機材を選択してください。