ニキビ跡がクレーター状になってしまった場合、改善する方法を知りたいですよね。クレーター状のニキビ跡のセルフケアを行っているもののなかなか改善せず悩んでいる人もいるでしょう。
クレーター状のニキビ跡は自然治癒しない特徴がありますが、さまざまな治療法があります。当記事では、ニキビ跡によるクレーターの種類や治療法を紹介するので、ぜひ、参考にしてください。
ニキビ跡のクレーターを自力で治すのは難しい
ニキビ跡のクレーターを自力で治すのは難しい場合がほとんどです。
ニキビ跡のクレーターは、医学用語では萎縮性瘢痕といい、ニキビの炎症や化膿が肌の真皮層まで及び、真皮層の細胞が破壊された状態です。さらに、肌の真皮層は表皮のようにターンオーバーによる再生が行われないため、セルフケアや時間の経過による自然治癒は難しいといえるでしょう。
ニキビ跡によるクレーターには種類がある
ニキビ跡によるクレーターには種類があります。さらに、クレーター状のニキビ跡は、複数のクレーターの種類が混在しているケースが多く見られます。
【ニキビ跡によるクレーターの種類】
種類 | アイスピック型 | ローリング型 | ボックスカー型 |
特徴 |
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原因 | ニキビの治癒が長引くことで毛穴から膿が排出され続け、毛穴に沿って皮膚の繊維化が進んだ結果、毛穴が固くなって小さな穴ができる | 強い炎症によって瘢痕組織が毛穴の周囲だけでなく、真皮から筋膜にかけて縦方向に生じて皮膚がひきつられてできる | 同部位にニキビの炎症が繰り返し起こり、正常の創傷治癒が行われなくなってできる |
クレーターは種類によって深さや形状の違いがありますが、いずれもニキビの炎症によってできた瘢痕組織(はんこんそしき)です。瘢痕組織とは傷が治癒する過程で生じる組織のことです。
ニキビの炎症が長引いたり、ニキビが同じ場所に繰り返しできることで、毛穴や毛穴周辺の皮膚組織に影響を与えた結果、異なる形状のくぼみが残る状態になります。
ニキビが繰り返しできないようにすることや、ニキビの炎症を抑えるようにすることが、ニキビ跡がクレーター状になるのを防ぐための対策といえるでしょう。
ニキビ跡のクレーターは症状によって向く治療法が異なる
ニキビ跡のクレーターは凹みの深さや部位の面積が異なる場合や、複数のタイプが混在するケースがあるため、症状によって向く治療法が異なります。さらに、クレーターは、凹みの深さや部位の面積などによって改善までに必要となる治療の回数も変わってきます。
【ニキビ跡によるクレーターの治療法】
治療法 | 治療が適するクレーターの種類 | 治療回数目安 |
マイクロニードル |
| 3~12回(4~6週間間隔)
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レーザー治療 |
| 5~10回(4~8週間間隔) |
サブシジョン |
| 1~3回(4週間間隔) |
CO2アブレージョン |
| 1回~ |
スキンブースター |
| 1回~(3~4週間間隔) |
再生医療 |
| 1回~ |
各種手術 |
| 1回~ |
なお、ニキビ跡のくぼみが深い場合には、複数の治療法を組み合わせることで効果が期待できるケースもあります。症状に適した治療を選択するためにも皮膚科専門医の診察を受けることを検討してください。
マイクロニードル
マイクロニードルは、無数に並んだシート状の針で肌に穴をあけ、修復過程で肌の再生を促す治療法です。マイクロニードルの施術後、コラーゲンが生成されるため、比較的凹みが浅いクレーター状のニキビ跡に効果が期待できます。
【マイクロニードルの種類】
種類 | 高周波(RF)エネルギーの照射 | ドラッグデリバリーシステム |
ダーマペン | 無 | 無 |
ポテンツァ | 有 | 有 |
ダーマペンとポテンツァは「マイクロニードルから高周波(RF)エネルギーを照射するか」「針穴から直接薬剤や美容有効成分を導入できるドラッグデリバリーシステムが備わっているか」の2点によって異なります。
ポテンツァは、高周波エネルギーの照射とドラッグデリバリーシステムにより、肌の深部で熱を発生させ、コラーゲンとエラスチンの生成をより促進できます。一方、ダーマペンは、ポテンツァよりダウンタイムを短縮しながら肌の修復を行うことが可能です。
マイクロニードルを用いたニキビ跡の改善は、クレーターの深さや面積によっては施術を繰り返す必要があり、他の治療と併用した方が効果的な場合があります。それぞれの施術方法を確認したい人は「ポテンツァ」「ダーマペン4」を参考にしてください。
レーザー治療
レーザー医療機器の中には、クレーター状のニキビ跡を改善するうえで有用な機種があります。なかでも、フラクショナルレーザーは、コラーゲンやエラスチンの生成を促進させる作用があるため、クレーター状のニキビ跡の改善に適しています。
フラクショナルレーザーは、レーザーを点状に照射することで皮膚に刺激を与え、皮膚の再生を促すタイプのレーザー医療機器です。さらに、フラクショナルレーザーは、深度を重視したアブレイティブ(蒸散型)とダウンタイムの短縮を重視したノンアブレイティブ(非蒸散型)に分類されます。
【フラクショナルレーザーの種類】
種類 | アブレイティブ(蒸散型)フラクショナルレーザー|AFL | ノンアブレイティブ(非蒸散型)フラクショナルレーザー|NAFL |
特徴 | 皮膚の表面に点状の穴を開け、創傷治癒力を利用した症状の改善を行う | 皮膚の表面に穴を開けずにわずかなダメージを与え、創傷治癒力を利用してコラーゲンの再生を行う |
ダウンタイム | 長い | 短い |
照射回数目安 | 2〜6回 | 6〜12回 |
機種の例 |
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ニキビ跡によるクレーターを改善するためには、肌の真皮層のダメージを再生する必要があるため、アブレイティブフラクショナルレーザー(AFL)が適しています。
なお、AFLにも複数の機種があるため、レーザー治療を希望する場合は、皮膚科専門医と相談しながら自身の症状に合った機種のレーザーを照射してください。
サブシジョン
サブシジョンは、特殊な針を使用し、クレーター状の肌の下にある皮膚の繊維を切り離す治療法です。ニキビ跡によってクレーター状になった皮膚の下に存在する固く癒着した組織を針で切り、クレーター陥没した部分を持ち上げます。
サブシジョンは比較的クレーターの凹みが深くなだらかなローリング型のクレーターに向く施術といえます。サブシジョンを検討する部位に、ローリング型のクレーターだけでなく、複数の種類のクレーターが存在している場合には、他施術と併用されることもあります。
なお、サブシジョンによって改善が見込まれるまで、1~3回の施術が必要となり、回数には個人差があります。
CO2アブレージョン
CO2アブレージョンは、CO2レーザーを用いて、ニキビ跡の凹み部分の表皮を除去し、創傷治癒反応によってクレーターを改善する方法です。ニキビ跡の凹みにCO2レーザーを照射し、肉芽組織が形成されることで凹みをなだらかな状態にします。
CO2アブレージョンが向くのは、アイスピック型やボックスカー型の凹みが深いタイプのニキビ跡です。レーザー治療では複数回の施術が必要なうえ、効果に上限があるような凹みが深いタイプのニキビ跡でも、1回のCO2アブレージョンによって凹みをなだらかにすることが可能です。
なお、CO2アブレージョンはダウンタイムを要する施術です。術後は、上皮化が完了するまで被覆材を1~2週間ほど張り続ける必要があり、施術部位の色素沈着を防ぐためにメラニンの生成を抑制するための内服薬(トラネキサム酸、ハイチオール、シナールなど)を服用したり、線維芽細胞増殖因子(bFGF)を含む薬剤を使用して線維芽細胞の増殖とコラーゲンの生成を促進させて傷の治癒を早める方法が採られたりする場合もあります。
スキンブースター
ヒアルロン酸やジュベルックなどを注入し、クレーターの凹みを改善する「スキンブースター」による治療法があります。スキンブースターとは、有効成分を注射器で肌に注入し、肌の状態を改善する治療法です。
【クレーター治療におけるスキンブースターの例】
種類 | 概要 | 特徴 |
ヒアルロン酸 |
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ジュベルック |
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ヒアルロン酸は元々体内に存在している成分で、時間の経過とともに体内に吸収されます。効果が持続する期間は、注入量は肌の状態にもよりますが、1年程度であるため、クレーターを一時的にでも改善したい場合やサブシジョン治療の補助としても用いられる治療法です。
ジュベルックは、「ポリ乳酸(PDLLA)」と「非架橋ヒアルロン酸」を含んだ薬剤で、肌の弾力などに関わるコラーゲン線維やエラスチン線維を増加させる作用があります。注入後は1~2年程度が効果の持続が見込まれます。
なお、スキンブースターが向くのは比較的大きめかつ浅めのローリング型とボックス型のクレーターです。スキンブースターによる治療が適しているかどうかは皮膚科専門医の診察を受けて相談することを検討してください。
再生医療
再生医療によって、凹凸状になった肌のコラーゲンや皮膚組織の再生を促す方法があります。ニキビ跡に用いられる再生医療では、自身の体から採取した脂肪や真皮線維芽細胞(肌細胞)を注入したり、エクソソームを浸透させます。
真皮線維芽細胞は、コラーゲン・ヒアルロン酸・エラスチンなど肌のハリの元になる細胞で、自分の体にある「細胞」や「血液」を使用する方法は、リスクが少なく持続性の高い治療法といえます。
エクソソームは、細胞から放出される物質(細胞外小胞)の一種で、細胞を修復する働きがあります。エクソソームによるクレーターの治療は、ダーマペンやポテンツァの施術時に浸透させたり、フラクショナルレーザーを照射後に塗布するなど、他の施術と組み合わせて行われることが多い治療法です。
ただし、再生医療でのニキビ跡治療を行っている病院は限られる場合があります。再生医療を用いたクレーター肌の改善を希望する場合は、ニキビ跡の治療を行っている皮膚科専門医に問い合わせてみましょう。
各種手術
ニキビ跡のクレーターを改善する手術として「縫合」「パンチ挙上術」「皮膚移植」があります。
【ニキビ跡によるクレーターを改善する手術の例】
縫合手術 | パンチ挙上術 | 皮膚移植 |
クレーター部位を切除して縫い合わせる | パンチを用いて、クレーター部位の皮膚を抜き取り、耳裏などから抜き取った皮膚を貼り付けたり縫い付けたりする | 正常な皮膚組織から取り出して培養した表皮幹細胞を、クレーター部位に移植する |
アイスピックタイプのニキビ跡は、他の治療によって改善されないケースが多いため、数が少ない場合は切除し縫合する手術が適しています。また、深いボックスカータイプのニキビ跡は、パンチ挙上術が行われる場合がありますが、傷跡が残るリスクがあるため、最終手段といえるでしょう。
ただし、症状やクレーターの数によって、皮膚移植や他の治療を組み合わせた治療が適する場合があります。ニキビ跡のクレーターの状態に応じた適切な処理を受けるためにも、ニキビ跡による深い凹みがある場合には、皮膚科専門医に相談してください。
まとめ
ニキビ跡のクレーターは、ニキビの炎症や化膿が肌の真皮層まで及び、真皮層の細胞が破壊された状態です。肌の真皮層はターンオーバーによる再生が行われないため、」自然治癒が難しいといえますが、さまざまな治療法が存在します。
ニキビ跡のクレーターは「アイスピック型」「ローリング型」「ボックスカー型」に分類され、複数の種類が混在することがあります。クレーター状のニキビ跡は、種類によって、開口径(サイズ)、くぼみの状態、適する治療法が異なります。
なお、ニキビ跡のクレーターは、種類やくぼみの状態によって向く治療法が異なります。クレーターは複数の種類が混在しているケースが多いため、向く治療法に関しては皮膚科専門医に相談してください。