ニキビが治った後、盛り上がったケロイド状の跡になってしまい、なかなか元の肌の状態に戻らず悩んでいる人もいるのではないでしょうか。当記事ではニキビ跡がケロイド状になる要因や治療法について解説します。
ケロイドタイプのニキビ跡は、自然治癒する可能性は低いものの、皮膚科や形成外科での治療によって改善します。さらに、ケロイド状のニキビ跡の治療法は、複数の方法が存在します。
ケロイド状のニキビ跡になる要因を把握したうえで、治療を受ける際の参考にしてください。
ニキビ跡がケロイド状になるおもな要因は炎症の持続
ニキビ跡がケロイド状になるおもな要因は、傷が治る過程における原因不明の炎症の持続です。ケロイドは、傷などが治る過程で、膠原線維(コラーゲン)などをはじめとするタンパク質からなる結合組織が増殖し、正常な組織と置き換わっていき、皮膚が硬くなってしまった状態です。
特に、顎下や口周りはケロイドの好発部位です。一般的にケロイドは前胸部や肩など皮膚の張力が高い部位に発生しやすいと言われています。
【ニキビ跡がケロイド状になる要因】
- 特に重度のニキビや治療が遅れた場合
- ニキビを潰してしまったり、大きなニキビで傷が治るのに時間がかかった場合
- 遺伝的要因:家族にケロイドの既往がある人
- 体質、遺伝:家族にケロイドの既往がある人
- 人種差:肌の色が濃い人(有色人種は白色人種よりもケロイドを発症しやすい)
- 年齢:30歳以下の人
仮にケロイドができやすい体質であっても、ニキビができた段階で「炎症を起こさないようにする」「ニキビを潰さない」ことによってニキビ跡がケロイド状に盛り上がることを防げる可能性があります。
ケロイドと似た症状に肥厚性瘢痕があります。ケロイドは元の傷やニキビのサイズよりも大きく、増大傾向があるのに対し、肥厚性瘢痕は傷の範囲内に収まり、盛り上がりが見られる傾向があります。さらに痒みや痛みを伴う場合にはケロイドである可能性が高くなります。
なお、ニキビ跡が盛り上がった状態が持続している場合、実際にはケロイドではなく粉瘤(ふんりゅう)である可能性もあります。粉瘤も自然治癒しないため、盛り上がりのあるニキビ跡が気になる場合には、自己判断せず、皮膚科専門医に相談することを検討してください。
ケロイドタイプのニキビ跡の治療法
ケロイド状のニキビ跡は自然治癒しないものの、皮膚科や形成外科での治療を受けることで治せます。
【ケロイドタイプのニキビ跡のおもな治療法】
治療法 | 詳細 |
内服薬 | <保険適用>
<保険適用外>
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注射 | <保険適用>
<保険適用外>
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レーザー治療 | <保険適用外>
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その他自費治療 | <保険適用外>
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上記以外にも、ケロイド状のニキビ跡は、症状によって外用薬治療、圧迫療法、手術治療などが行われる場合があります。
ケロイド状のニキビ跡に痛みやかゆみなどを伴う際の治療は、保険適用となる可能性が高く、おもに見た目を整える目的で行う治療は保険適用外となる可能性が高いでしょう。
なお、保険適用内で行われるニキビ跡の治療法に関して確認したい人は「皮膚科で保険適用となるニキビ跡の治療について解説」を参考にしてください。
内服薬
ケロイド状のニキビ跡の治療法のひとつとして内服薬の服用が挙げられます。内服薬の服用による治療法は、薬の種類によって保険適用になるものとならないものがあります。
【内服薬によるケロイド状のニキビ跡治療法】
内服薬 | 保険適用 | 薬の詳細 |
リザベン(トラニラスト) | 〇 |
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柴苓湯(さいれいとう) | × |
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抗アレルギー薬であるリザベン(トラニラスト)は、厚生労働省の認可を受けた内服薬です。ケロイド状のニキビ跡に赤み、かゆみ、痛みを伴う場合、リザベン(トラニラスト)の服用により症状が緩和される可能性があります。
漢方薬の柴苓湯(さいれいとう)は、線維芽細胞の異常増殖を抑制し、炎症や自己免疫に関する症状への効果が期待できます。柴苓湯は、ステロイドに類似した作用がある小柴胡湯(しょうさいことう)と五苓散(ごれいさん)の合剤漢方で、柴苓湯をステロイド剤と併用する治療法もあります。
なお、リザベンは保険適用、柴苓湯は保険適用外となります。いずれの場合も、適した治療であるかどうかは医師の診断によります。
注射
ケロイド状のニキビ跡の治療には、局所注射療法も用いられます。局所注射療法は、治療の目的に応じて注射する薬剤が異なり、薬剤の種類によって保険適用になるものとならないものがあります。
【局所注射によるケロイド状のニキビ跡治療法】
薬剤 | 保険適用 | 薬剤の概要 |
ケナコルト®(トリアムシノロンアセトニド) | 〇 |
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ボトックス | × |
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ケナコルト®(トリアムシノロンアセトニド)は炎症を抑えるステロイド剤です。ケナコルト®の注射療法は、盛り上がったニキビ跡だけでなく、赤みのあるニキビ跡や、しこりがあるタイプのニキビの治療にも用いられます。
一方、ボトックスは、注射した部位の赤みを抑え、盛り上がりを平坦にする効果が期待できる薬剤です。ボトックスはケナコルトと比較して注射をする際の痛みや副作用を軽減できる注射療法です。ケロイド状のニキビ跡の場合、2カ月に1回程度の頻度で、3回ほど行うと改善が見られるでしょう。
なお、ケナコルト注射は完治していないニキビがある場合や肌に赤みが見られる場合、症状が悪化する可能性があるため、治療を行えない場合があります。ケナコルト注射は顔以外、ボトックス注射は顔の治療に適しているといえます。
レーザー治療
レーザーの照射によって、回数を重ねるごとにケロイド状のニキビ跡の赤みや盛り上がりを次第に目立たなくできます。ケロイド状のニキビ跡を改善する治療に向くレーザーには種類があり、いずれも保険適用外です。
【ケロイド状のニキビ跡に向くレーザーの機種】
レーザーの種類 | 概要 |
Vビーム |
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Nd:YAGレーザー |
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フラクショナルレーザー |
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VビームやNd:YAGレーザーは、いずれもヘモグロビン色素に反応し、異常のある毛細血管を選択的に破壊できるレーザーです。ケロイドの赤みは、皮膚の深部にある真皮で炎症が続くことにより生じます。ケロイドの赤みの原因である毛細血管をVビームやNd:YAGレーザーを照射することで、赤みを目立たなくする効果が期待できます。
フラクショナルレーザーは、レーザーを点状に照射することで皮膚に刺激を与えてコラーゲン生成を促すタイプのレーザーです。照射によって、ケロイドの肌の盛り上がりを平坦にする効果が期待できます。フラクショナルレーザーは、盛り上がりだけでなく、凹みのあるクレータータイプのニキビ跡の治療にも有用です。
ケロイド状のニキビ跡は、VビームもしくはNd:YAGレーザーで赤み改善し、フラクショナルレーザーで盛り上がりを改善できます。いずれも同時に照射することはできないため、レーザーでの治療を希望する場合には、皮膚科専門医と相談しながら症状に応じた治療の計画を立てるようにしましょう。
その他自費治療
その他自費治療として「レガート」「 ダーマペン」が挙げられます。いずれも症状に応じて複数回施術を受けることで、ニキビ跡の赤みを改善し、ケロイドの盛り上がりを平坦に近づけていく治療法です。
【自費治療の例】
治療法 | 概要 |
レガート |
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ダーマペン4 |
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レガートは、高周波(RF)で発生させるプラズマ波「iPixel」と高圧超音波導入装置「IMPACT」による肌質改善治療です。ケロイド状のニキビ跡への施術は、iPixelで強い熱エネルギーを肌の深部で生じさせ、皮膚の小さな孔を開けたのちに、皮膚の萎縮作用があるトリアムシノロン(ケナコルト)を塗布して殺菌作用を有するIMPACTで薬剤を肌の深部に押し込みます。レガートは、ニキビ跡以外にも、ニキビや傷跡の改善が期待できます。
ダーマペン4は、無数に並んだシート状の針で肌に穴をあけ、修復過程で肌の再生を促す「マイクロニードル」治療法です。ダウンタイムや痛みを抑えながら施術を受けられるため、レーザー治療の痛みに耐えられない人に向いているといえます。
なお、自費で受けられる治療法は病院によっても異なり、治療法の向き不向きは症状によっても異なります。ケロイド状のニキビ跡を自費治療で改善したい人は、ニキビ跡の治療を得意とする皮膚科専門医に相談してください。
まとめ
ニキビ跡がケロイド状になるおもな要因は、傷が治る過程における原因不明の炎症の持続です。ケロイドができやすい体質の人がニキビができた場合や、ニキビを潰した際の傷が深かったり、治るまでの時間がかかった場合に盛りあがったケロイド状の後になる可能性があります。
ケロイドができやすい体質であっても、ニキビができた段階で「炎症を起こさないようにする」「ニキビを潰さない」ことによってニキビ跡がケロイド状に盛り上がることを防げます。
また、ケロイド状のニキビ跡は自然治癒しないものの、皮膚科や形成外科での治療を受けることで治せます。ケロイドタイプのニキビ跡のおもな治療法として「内服薬」「注射」「レーザー治療」「その他自費治療」があります。
なお、ケロイド状のニキビ跡の治療法は、症状によって異なるため、治療を検討する場合には、ニキビ跡の治療を得意とする皮膚科専門医に相談してください。